グローバリズム、リージョナリズム、トライバリズム【経営のヒント 220】
今回は『ポスト資本主義社会』、第7章「グローバリズム、リージョナリズム、トライバリズム」からお伝えします。
グローバリズムは、いま日本語を当てるのも不自然なほど日本語化しています。
一応地球主義となるのですが・・・。
リージョナリズムは地域主義、トライバリズムは部族主義を表すものです。
今日の一言です。
<ドラッカーの一言>
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ポスト資本主義社会における政治体制は、それぞれが異なる
方向に向かう三つのベクトルをもつことになる。
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『ポスト資本主義社会』 1993年 ダイヤモンド社より
三つのベクトルこそが、グローバリズム、リージョナリズム、トライバリズムです。
まずはグローバリズムについてです。
この言葉につきものなのは多国籍企業に代表される経済分野です。
通貨に国境がなくなったといわれて久しいのですが、今回の世界同時不況の進展のスピードに圧倒され、誰もがグローバル化を実感していることと思います。
通貨以外にも国境がなくなったものは沢山あります。
情報、環境問題、テロ対策、軍備管理などの分野だと指摘しています。
1993年のこの著書で湾岸戦争という出来事からテロの脅威を指摘し、加えて炭疽菌の恐怖を記すなど、ドラッカー博士の脅威の慧眼にあらためて驚かされます。
これらの問題解決手法の典型例は、条約と国際機関なのですが、実効性については疑問が残ります。
リージョナリズム、地域主義の代表格はEUです。
かつてブロック経済という言葉もありましたが、メキシコを含む北米地域のNAFTA、東南アジア10カ国が加盟するASEANなどが現代のリージョナリズムの象徴です。
ドラッカー博士は、こう指摘します。
「外の世界への対応において統一され、広く開かれておりながら保護主義的であるという相互主義の立場をとりうる」と。
この動きは、第六章のテーマであった「国民国家」の影響を縮小させます。
EUでは、自国通貨すら消滅してしまいました。
地域間の関係とともに、地域内では統一の中に多様性をどう維持していくかという葛藤と戦うことになります。
ドラッカー博士は、リージョナリズムをグローバリズムよりも進展した現実だと指摘しています。
最後はトライバリズム、部族主義です。
トライバリズムは、グローバリズム、リージョナリズムという統合化、均質化への心理的抵抗軸として浮上してきます。つまり多様性の維持の問題です。
スコットランドの独立問題、カナダの分離独立運動など世界の耳目を集める地域はもちろん、大小様々な地域が小さくまとまることを志向しています。
一言でいえば目に見えるコミュニティを確保しようとする動きです。
世界は急速にグローバリズム、リージョナリズムによりコミュニティを失っています。
そのバランスを取るようにトライバリズムの動きが活発です。
レベルは違いますが、NPOなどの動きが活発なのもコミュニティを求める姿勢の現われです。
今後、コミュニティ化は一つの機会となります。
これら三つのベクトルは、どれも方向が違います。しかも包含関係にあり、ことは複雑です。
一つバランスを崩すと行き過ぎたグローバリズム、保護主義的なリージョナリズム、流血のトライバリズムという悲劇を招きます。
一国はもとより組織や個人の立ち位置についても確認しておかなければならない時代になりました。
章末にドラッカー博士は指摘しています。
「ポスト資本主義時代の政治体制における第一の仕事は、メガステイトがはなはだしく減少させた政府の職務遂行能力を回復することである」と。
日本の現状を見ると、ついつい「政局と政争に明け暮れている暇があったら…」
と声を大にしてしまいます。私だけでしょうか。
佐藤 等