企業家的スキルとしての戦略計画【経営のヒント 253】
『マネジメント』第10章のテーマは、「企業家的スキルとしての戦略計画」です。
ただの長期計画では、ありません。新しい未来を切り拓くための計画、それが戦略計画です。企業家的スキルとして経営者に求められるものです。
<ドラッカーの一言>
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戦略計画とは、リスクを伴う企業家的な意思決定を
体系的に行い、その実行に必要な活動を体系的に
組織し、それらの活動の成果を体系的にフィードバック
するという連続したプロセスである。
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『マネジメント』p.158 1973年 ダイヤモンド社より
ここには、いくつかのキーワードがあります。
まずは「リスク」。ドラッカー博士は、リスクは回避すべきものではないといいます。そもそも企業における経済活動自体が、リスクそのものです。
「現在の資源を未来に、すなわち不確実な期待に賭けることである」といい切ります。そのうえで計画は、より大きなリスクを負担できるようにするために立てるのだといいます。この言葉には、唸ってしまいます。
次のキーワードは「企業家的な意思決定」です。ただの意思決定とどこが違うのか。企業家とは、新たな企てを行う人のことです。企業を営んでいる人ではありません。言葉を変えるとイノベーションを行う人と表現することが出来ます。ですから戦略計画は、何か新しいことを行うための計画を含むものです。つまり未来のために長期で今何を行うかを明らかにしたものです。
3つ目のキーワードは、「活動を体系的に組織」することです。計画とは、数字の羅列ではなく、誰がいつ、どのように動くかを定めたものです。
数字は、その結果に過ぎません。部門別、チーム別、人別の役割と活動を定めたもので、日々の活動のもとになるものです。計画の成否は、ここにかかっているといっても過言ではありません。
最後のキーワードは、「成果を体系的にフィードバックする」です。Feedは、Foodが語源です。餌を与えるというような意味があります。活動成果という果実(成功も失敗も含む)を、さらに美味しく食べること、価値ある形で食すことといっていいと思います。それにより次の行動の栄養にすることが目的です。フィードバックは、感知系、伝達系、制御系の3つの機能から成り立っています。まずは、環境変化や成功・失敗などを感知する機能を備えるところがスタートです。それを適切な場所に伝えます。そのインプット情報をもとに新たな行動を生み出すことが求められるのです。
こうした日々の「連続したプロセス」だけが成果を約束します。計画したことだから、実現できる可能性があります。計画しないことが、自然に出来てしまったということはありません。それを奇跡といいます。計画は、未来を生み出す道具です。新しい未来は、戦略計画から。新年に当たって、もしくは4月などの新年度に向けて、戦略計画を立てることをお勧めします。
佐藤 等