知識の経済学【経営のヒント 224】
『ポスト資本主義社会』の第3部「知識」というカテゴリーです。
今日も前回に引き続いて第10章「知識の経済学」からお伝えします。
<ドラッカーの一言>
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われわれの大部分、あるいはおそらく全員が、
知っていることの数分の一しか利用していない。
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『ポスト資本主義社会』 1993年 ダイヤモンド社より
今日の一言、「数分の一しか利用していない」の理由をドラッカー博士は、「多様な知識を道具箱のなかにしまい込み、道具として使っていない」ことにあるといいます。
セミナーオタク、雑学王、速読による情報収集家…などと呼ばれる人を筆頭に私たちは、道具箱の道具を増やすことに一生懸命です。
なぜなら小さい頃から本を読み、人から教えてもらい得られた情報をひたすら紙に書き出すこと(テスト)を繰り返してきたからです。
いったい私たちは、どれだけ情報を仕入れれば氣が済むのでしょうか。
そろそろ仕入れた情報や知識を使うことに意識をシフトさせなくては…。
インプットからアウトプットへのギア・チェンジです。
前回の223号に書かせていただいた
<何が大切な情報・知識であるかを知ること
→これらを蓄積すること→活用を始めること→仮設を立て行動すること
→反省すること→行動→行動にフードバックすること>
は、そのことを示しています。
ドラッカー博士は、知識の生産性を上げるために4つの原則を示しました。
第一原則:違いを生み出すために野心的な目標を立てる。
第二原則:焦点を絞って集中して仕事をする。
第三原則:変化を知り機会をとらえ、自らの能力と強みで成果に変える。
第四原則:長期的な成果と短期的な成果の均衡を図る。
第一原則は独自性や強みを打ち出す分野とレベルを決めることです。
狭ければ狭いほどよりシャープになり他の追随を許さない孤高のポジションとなります。
ただしチャンと成果を生む仕事になる分野であることが大切です。
第二原則は、その分野に投下する時間の量と行動の質のコントロールのことです。
行動の質とは、一つの行動の目的を考え、次の行動への波及効果を意識することです。
着手する順番、ゴールまでのマイル・ストーンなどを意識して<知識の連鎖>を作ることです。そして常にこの連鎖を強くそして長くすることを忘れてはなりません。
第三原則は、こうして準備した人にのみ訪れるチャンスを確実に掴むことです。
運やツキは準備していた人だけが手にすることができます。
第四原則は、より現実的です。時間軸を考慮に入れて<成果>を価値ある形で分割して市場に出していくことです。
短期的な成果をいくつか重ね、最終ゴールは短期的な成果の単純な総和をはるかに超えるものを世に送り出すことを考えます。
もちろん短期的な成果を事前に少しずつ市場に出せない場合もあります。
その際には、時間と資金のコントロールがより重要な課題となります。
スタートは「違いを生み出す」ことです。
支持され、選ばれる存在になるために何を積み上げるのか。
そのためのドラッカー博士の問いはこうです。
「この仕事に利用できるようなことを何か知っているか」、「何を学んでいるか」。
つまり、すでにインプットしていることから探せというのです。
その上で「足りないものは何か」を問う。
少なくともこれから何かをゼロからインプットしようという間違った選択肢だけは選んではいけないということです。
手持ちの中に宝ものがある。
そう考えてじっくりと知識のたな卸しをしたいものです。
佐藤 等