人事管理は破産したか【経営のヒント 86】
第21章は、「人事管理は破産したか」というやや飛躍したタイトルです。
本書は、50年前に著されていますが、1900年代前半に一世を風靡した科学的管理論、人間関係論を取り上げています。当時最前線の理論の果たした役割の大きさを認識しながら、本質的なところを突いてバッサリとやっています。
たとえば、科学的管理論は、動作を分解しこれに仕事を対応させても成果はあがらないこと、実行と計画を分離しても成果はあがらないこと、人間関係論では、心理学をスタートとしているため人と仕事の関係を正面から捉えていないことなど、明快に切っています。
<ドラッカーの一言>
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人と仕事のマネジメントにかかわる最大の問題は、いかにして
まとまりのある完結した仕事を行うことができるようにし、かつ、
いかにして責任をもって自らの仕事を計画することができるよう
にするかという問題になる。
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新訳『現代の経営』(ダイヤモンド社)より
この言葉は、約70年前の人事関係の理論を切った結果出たものですが、そのまま現代に使えます。仕事における「完結力」はとても大切で私も常日頃この言葉を使います。人事評価の言葉に「要援助」という言葉がありますが、その意味は援助を受ければできるレベルのことです。
援助は上級者の手を必要以上に煩わせるものです。1つの完結した仕事をどれだけ増やせるかが仕事で成果をあげるポイントです。したがって経営者は、3ヶ月~6ヶ月で完結した仕事をこなす人材を仕上げる仕組みをもつ必要があります。成長する企業の絶対条件と言っても過言ではありません。
そうして鍛え上げられた人材のみが「責任をもって自らの仕事を計画」できるのです。指示まち族が多いのは、もしかして人材を鍛える適当なプログラムを企業が持っていないからかもしれません。
佐藤 等